颯爽退勤日記

日々の考えごととか、ねことの日常とか

最近読んだ本(2023年6月)

最近読んだ本たちをジャンルから1つずつ。

小説:世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド/街とその不確かな壁

村上春樹の新刊が出て話題になっていたときに、ずっと前に旅のお供として買ったはいいもののkindleに積読してある『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』のことを思い出し、時間がある時に読み始めた。ある程度読み進めるとやっぱり入り込んでしまい、そのまま新刊である『街とその不確かな壁』も読んでしまった。

この2冊は繋がっているというか、『街とその不確かな壁』が先に書かれたものの*1、当時世に出すには生煮えだったらしく、その内容にケリをつけるために新しく書いたものが『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』とのこと。

前提として、私は『1Q84』も『騎士団長殺し』も別に読んでいないし、初期の頃の村上春樹を少々かじっているだけのペーペーです。他の作品と絡めたようなウィットな推察もできないし、作中に出てくる外国の小説や音楽などといった文化も基本的にはわかりません。

ただ私は俗に言われる村上春樹テイストな文章は割と好きで、「生と死」「表と裏」みたいな2つの境目の話を、表現方法は変えながらずっと永遠と語っている(と私は思っている)のが好み。

今回の2冊に関して言えば、「壁のなか(あっち)」と「壁のそと(こっち)」の話を永遠にしている。完全だからこそ時間軸もない意識の世界と、不完全だからこそ色々なことが起こる社会的な世界。

私はその情景を頭に思い浮かべた。頑強な両腕を持つ誰かが椰子の木の下で待ち受けていて、私の落下をしっかり受け止めてくれる。でもそれが誰なのか、顔が見えない。おそらくどこにも存在しない架空の誰かなのだろう。私は少年に尋ねた。 「きみにはそういう人はいるのかな? きみを受け止めてくれる人が」 少年は首をきっぱり横に振った。「いいえ、ぼくにはそういう人はいません。少なくとも生きている人たちのあいだには一人もいません。だからぼくはいつまでも、時間の止まったこの街に留まることでしょう」 そう言うと、少年はまっすぐ堅く唇を結んだ。 私は彼の言ったことについて考えてみた。その高みからの私の激しい落下をしっかり受け止めてくれる人は(もしいるとして)いったい誰なのだろう? 『街とその不確かな壁』p649

色々ハイライトしていたが、ここが一番記憶に残っている。社会で生きている以上自分以外の言動によって浮き沈みが起こることは往々にしてあるし、そんな沈んだ時に受け止めてくれる人がいるのは相当ありがたい事実なのかもなと。

漫画:違国日記

ずっと気になっていて、ここの週末で一気に10巻まで読んだ。なんで今まで出会ってなかったんだろうと思うぐらい、めっっっちゃくちゃ好みだった。

槙生さん、ぶっ刺さるパンチラインを連発しまくるので迂闊にページをスラスラめくれない。何気なく発する言葉に「アァァ……ソレワカルゥ…」と食らってしまう。

「あなたがわたしの息苦しさを理解しないのと同じようにわたしもあなたのさみしさは理解できない それはあなたとわたしが別の人間だから」3巻 p94

本当にわかる。頷きすぎて首痛めた。でも、私と違ってこの後に

「ないがしろにされたと感じたなら悪かった だから………歩み寄ろう」「…わかり合えないのに?」「そう わかり合えないから」3巻 p95

と言えるのが本当に素晴らしい。見習いたい。

親を亡くして槙生さんと暮らすことになった高校生(最初は中3)の朝ちゃんも本当に良い。素直で基本的にあっけらかんとしつつも、疑問や葛藤を心の中に溜め込んで苦しくなったり、吐き出してみたり、言語化に頑張ってみたり。

自分には何もないって思う気持ちや、自分の道なんて勝手に何もかも決めてくれよ!という気持ちは私も痛いほど感じたことがあるけど、周りのみんなが言うように、あなたは生きているだけであなただし、あなたしか出せないものがあるから。それを欲しくても得られない人がたくさんいるから。

「…あなたの明るさとかお喋り…ひとからの好意をきちんと受け取れて受け取らなくていいことは受け流せるところ」「…そういうものがわたしにとってどれほど欲しかったものか想像がつく?」9巻 p68, 69

ひとからの好意をきちんと受け取れて受け取らなくていいことは受け流せるところ、これ本当に大事だから!!!素晴らしいから!!

「歌上手くなくても かわいくなくても 聞き上手でもノリよくなくても 親いてもいなくてもあたしと友達でもそうでなくても ちょいちょいすげーしつこくても べつに成績普通でたまに動き変で そうゆうの全部なくても何もなくなんてないだろ」 10巻 p140

カンちゃん…私は泣いたよ。

少し前だったら朝ちゃんの視点で読むことが多いだろうけど、今は年齢も重ねただけあって自分だったら朝ちゃんにどういう風に接するだろう?なんと言葉をかけるだろう?という視点で考えてしまうのも、私自身が試されているような気持ちになってとても面白い。kindleで買ってしまったけど、これは手元で何度も読み返したい漫画だなあ。

雑誌:旅に行きたくなるシリーズ

BRUTUSの台湾、POPEYEの韓国、TRANSITのメキシコ。

それぞれの雑誌の良さが出ていてとてもよかった。台湾でタケノコにマヨネーズつけたやつ食べたいし、牛肉麺食べたいし、韓国でカンジャンケジャン食べたいし、ポッサムも食べたい。メキシコでタコスはもちろんカルニタス、ビリアというものも食べてみたい。 ああ……現地の食を楽しみに行きたいね。

このうちのどこかに行くぞ!!(メキシコだけハードル高なので実質2択)

*1:正確には、世には出されていない『街と、その不確かな壁』という中編小説が先に書かれた。その後それをもとに、2020年ごろから執筆開始したものが今回の新作らしいです。